大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)5072号 判決

刑事訴訟規則第五十六条第二項によれば判決書には公判期日に出席した検察官の官氏名を記載しなければならないと規定されていること及び原判決書には公判期日に出席した検察官の官氏名として検事武村啓太郞と表示されていることは所論のとおりである。

そこで原審公判廷に出席した検察官の氏名はその第一、二、三回を通じて中野芳之であり、検察官武村啓太郞は本件起訴の時からこれに関与していないとの所論について記録を調査するに、原審第二回公判調書によれば同公判期日に当初出席した検察官は中野芳之であつたが、同公判廷において証人菅野新治郞の尋問が行われている際検察官武村啓太郞が入廷して右検察官中野芳之と共に両名の検察官立会の下に審理が継続せられ、次いで証人友部節子の尋問が行われ、同証人の尋問終了と同時に検察官中野芳之は裁判官の許可を受けて退廷し、その後は検察官武村啓太郞のみの立会の下に、証人白石大八の尋問並びにその他の審理が行われ、同検察官の論告、弁護人の弁論を経て弁論が終結されたことが認められるのである。したがつて、所論のごとく原判決書表示の検察官武村啓太郞は全然本件に関与していないものとなすことはできない。しかして判決書には公判期日に出席した各検察官の官氏名をもれなく記載することを要するものではなく、弁論終結の際立会つた検察官の氏名を表示すれば足りるものと解すべきであるから、原判決のこの点に関する表示にはいささかも過誤は存しないのである。

論旨は理由がない。

同第二点について。

本件起訴状によると被告人が菅野新治郞に与えた傷害は「全治までに約一週間を要する打撲傷」とされていたのを、検察官が原審第一回公判においてこれを「全治までに約二週間を要する打撲傷等の傷害」と訂正したこと及び原判決がこれを訴因変更の手続によることなく「全治までに約一カ月を要した創傷」と判示したことは所論のとおりである。しかしながら原判決の認定した傷害の方法及び部位については本件起訴にかかるところと差違はなく、ただその全治までの期間につき起訴状が予め医師の診断予測したところに従つてこれを表示したのに対し原判決は実際に要した全治日数を表示したものであつて、右は単にその表示の方法を異にするに止まり、被告人の与えた創傷そのものについては本件起訴にかかるものと原判決の判示したところとの間に何らの変更もないのであるから、この点につき敢えて訴因変更の手続を要しないものというべきである。論旨は理由がない。

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